中国製自転車製造での孤軍奮闘記録−8−『愛』=油

自転車造りは『愛』と『信念』と『情熱』、と常々思っています。
これを現在の中国、そして日本に要求しても、無理というものです。
日本にもこだわりをもった自転車メーカーは、実際には少ない、
あるいは無いと思っています。
利益が少ない為に、こだわりをもてない、また消費者もこだわりを期待しない、求めない。、
こうなると、こだわりをもって企画設計しろ、というのが無理というもの。
もう一度40年以上前のような盛り上がりが、来そうで来ない。
時代は変わったのでしょう、もう大きな盛り上がりは来ないかも。
こうなると、更にこだわりをもった商品開発は、難しくなります。
こだわりをもった消費者層は増えていますが其の層は、
一部の完成車メーカーにとられていると感じています。
いくらこだわりをもった商品?を開発しても、売れる量は限られることになります。
私の言うこだわりをもった商品とは、何も特別な車種だけを、さすものではありません。
特に、物を作る上で、『愛』は欠かすことの出来ないものです。
生産現場に立ち、品質問題を担当されている方には、説明するまでも無いと考えます。
ではどうやって『愛』がない、『愛』を感じない中、品質を安定させていくのか!?
今のところ私は、『日本人の目で品質を確保する』以外、手っ取り早くて、確実度の高い方法は、見つかっていません。
一台でも怪我につながる不良は、当然、日本では許されない不良なのです。
物造り、100%品質保証などありえないことですが、人の命を乗せた自転車、少なくとも常に100%を目指す製造責任、販売責任があるはずです。
日中双方の企業は、これを怠ると生き残れる道は狭くなります。
中国でのOEM生産が殆どの中、こうした物造りのこだわりが、もてなくなっているのは、悲しいことであり、
これは本来、日本の得意な分野であるはずです。
生産地点は中国ですが、日本側もこれを忘れたら、日本の物造りは衰退して行きます。
中国の一部、大企業製造メーカーを除いて、上から下まで、物造りの基本が徹底的に違う中、これを改善しようなどと言うことは、無理な話で、
これを迂回して仕事をすることになります。
本来、やはり根本問題を解決しないことには、解決できないことには、問題が当然、根本からは解決できません。
ですから其の日暮しの品質維持に、従事しなければならず、仕事は減りませんし、増えることになります。
私の背中に背負った大きなカゴは、もう、問題で一杯で、新たな問題が発生するたびに、カゴからやるべき問題処理が、落ちていく状態です。
しかし、やはり、私の見た大企業の生産状況は、当時問題も多かったのですが、組織がしっかりしていて、問題責任の所在がしっかりしていました。
つまり改善が的確に行われることにつながるのです。
この工場は別格で、この工場と比較して話をしても、全く意味がないので止めますが、会社の進むべき道がはっきりと示されているのです。
ここまで来ると、この大企業も、問題が多いにせよ、後は従業員一同での行動になると考えます。
しかし同じ系列の他地域の工場においては、指導者、そして現場幹部の技術力及び考え方が成熟しておらず、
これを見ても企業というもの、いかに人材が重要かが理解できるところです。
企業というもの有能な人材が何人いて、其の人たちを支える、支えられる人が、いるかいないかに、かかってくると考えています。
つまり上層幹部が有能(技術及び経験が豊富で、部下の仕事内容が理解できる)か、有能でないかにかかってきます。
そして責任部署がはっきりしている、はっきりさせられる体制になっているか、ということになります。
しかしどんなに良い工場であっても、日本的な考え方は不足し、これは企画開発、そして技術面は、日本側がリードすべきであり、
日本側会社が、これを出来るか出来ないかは、品質が維持できるか出来ないかに、かかってくるのです。多くの日本側の会社は
中国側をリードできない状態で、これが開発面、そして品質面の足かせとなっているのでは。
BAAの試買テストでも、毎年スポーク張力問題が指摘されています。
抜き取り検査で指摘されているということは、ロット的にも不良があることが十分考えられることです。
こうしたことは中国では防ぎきらないことなのです。
こうした細かなことは中国非常に不得意とするところなのです。
またBAAの試買テストで指摘されることはないのですが、ヘッド部及びハンガー部のグリスの量においては、神経を払われないことも
多く、またグリスの性質にも神経を使われないことが多いのですが、表面だって確認できないことから、この問題
見逃されていると感じています。この問題、重要なことは素人でもわかることです。こうしたことからも私は、物造りに
愛を感じないのです。今現在は昔のように、自転車において、分解掃除を依頼することがありませんし、販売側も
ただ売るだけのことも多く、消費者側も分かりませんから、この点は、自転車品質の盲点となっています。
結果、リテーナーと呼ばれる枠の部分の腐食から、ベアリングの破損につながってくるのです。
油なしで歯車を回転させた場合、どうなるかは、誰でも知っていることです。愛とは油だと思っています。

写真は日曜日の朝、昼の食事です。豆乳(13円)、野菜饅頭(7円)、ごま団子(7円)、ゆで玉子(13円)。全部で120円ほど。